
梅の花が散ってしまいました。
梅は、花の数も控えめなので、散る時にも品がありますね。
桜の持つ勢いにも捨てがたいものがありますが、私はどちらかというと、梅の持つ品の方が好きかなー。
その昔、「サクラチル」という「電報」を受け取ったことがあります。
そう、合格発表。いや、不合格発表だ。
当時はインターネットなんて気の利いたシステムは当然無く、大学からの郵送の知らせは遅くなるので、学生さんたちが、貼り出された発表を見て合否電報をすぐに打つというサービスをしていました。
頼んでおくと、合格だと「サクラサク」、不合格だと「サクラチル」などの電報が届きます。
しかし、届いた電報の紙を開いて「チル」の文字を読んだ瞬間のあの感情は、どう表現したら良いのか。
それまで何度も、「サク」「チル」で場合分けをして、その瞬間の気持ちの持って行き方のシミュレーションを重ねているのですが、実際に自分の目で「チル」というカタカナを見た時のあの気持ち。いろんなものが詰まりすぎていて、なんとも簡単には表現できません。
今から振り返ると、それは大したことない問題で、いくらでも別のルートがあるようなことなんですが、当時リアルタイムで現実にふれていると、いろんなことを深刻に考えすぎちゃうんですよね。
電報の、無駄をそぎ落とした短いカタカナ文が、瞬間的な気持ちの深刻さにさらに拍車をかけてしまうような。
思えば合否電報は、そんなシステムだったのかもしれません。
その昔の自分のところまで戻って「散っても問題ないんだよー」「世の中にはもっと大事なことがある」と言ってやりたい。電報の「チル」だけでなく、ホントは別の言葉も必要なんですよね。
言葉って大事だなー。と、思います。
人の心を動かすのは、無駄をそぎ落とした美しい言葉だけではなく、それにプラスされる正直な気持ちなんでしょうねー。
PENTAX KP
Voigtlander Nokton 58mm/f1.4 SL ZK